GHOST IN THE SHEELL/攻殻機動隊とイノセンス

友人が「“スカイ・クロラ”を見てきたよ。今ひとつピンと来なかった。」という感想を伝えてきたのに触発されて、この前ytvが放送した“GHOST IN THE SHEELL/攻殻機動隊”と“イノセンス”のエアチェックを見てみた。その間にBShiの“鉄人28号 白昼の残月”も見ているのですが、それはまた別のお話。
スカイ・クロラ”を見てきた友人というのは、アニメもSFも映画くらいでしか触れない「一般人」。そういう人の「伝わらなかった」という感想は、僕のようなヌルオタからするととても興味深いので、そのあたりはまた今度突っ込んで聞いてみたいところです。
攻殻”も思えばずいぶん古い映画になってしまいましたなぁ*1
士郎正宗の“攻殻機動隊”は10年以上前に読んでいるけど、押井版を見るのはこれが初めて。今の今まで避けてきてたのは、“攻殻機動隊”と押井守の組み合わせが悪い化学反応をしているのではないかという不安のせい。不安というより根拠のない確信?「絶対酷いことになっているって!」みたいな。
で、“GHOST IN THE SHEELL/攻殻機動隊”の感想ですが、想像していたよりもずっと面白かった!
途中*2をもう少し摘んだほうが僕の好みだけど*3、その辺は押井の作風かなということで不満というレベルにはならず。
むしろ気になるのは、全体をちょっと見易くし過ぎてるところ。実際、本編放送前に流れたインタビュー中で押井監督本人が、

「難しい原作を、どうやって解る映画にしようか」

と語っていたけど、それにはかなり成功している。成功しているんだけど、それが故に「攻殻機動隊って、こんな話だったっけ?」という疑問みたいなのが浮かんできちゃう。
その当時はさほど心に引っかからなかったと感じた*4十何年前のマンガの記憶なんてあやふやになってきてるんだけど、映画を見ていたら細かいところもちょこちょこ思い出すわけで*5。まぁ僕の個人的なイメージギャップはともかく、客にもう少し考えさせてもよかったんじゃないかな。これも好みなのかなぁ。
映画としては相当面白い作品で、劇場で見ても満足して帰ったんじゃないかと思います。
次に“イノセンス”。こっちはちょっとダメ。映像はいいのでアニオタ的には飽きることなく見続けられるけど、押井守の存在感が前面に立ちすぎてて映画としてバランスが崩れちゃってる。
映画の“攻殻”がマンガの“攻殻”のある側面を忠実に再現しようとしているのに対して、“イノセンス”は押井守の嗜好を満たすための映画になっていると感じるんだよ。そして僕はそれが好きじゃない。
「少佐はそんな女じゃない」
これと似た感覚は“機動警察パトレイバー 2 the Movie”でも感じたんだよね。「しのぶさんはそんな女じゃない」ってね。
理想の女性像に対する見解の相違を割り引いたとしても、高い評価はできない。この映画で描きたいのが少佐なのかバトーなのか、それとも他の何かなのか。結構考えてるんだけど、わからない。それに少佐をデウスエクスマキーナにしてしまった点も褒められない。
アニオタ的には目を通しておくべきとは思うけど、絶対見とけというほどではないし、他人に勧めたいとも思わないね。
声優に関して。
草薙素子田中敦子という血肉を得た時点で“GHOST IN THE SHEELL/攻殻機動隊”はほぼ成功していたと思えるくらい、彼女の演技は良かった。田中敦子みたいな最高に肉感的な女優でなければ、「脳髄以外を持たない女」に存在感を与えることはできなかっただろうね。
イノセンス”の山ちゃんはスパイク*6みたいに感じたなぁ。“攻殻”のときは思わなかったんだけどな。
先述の友人には“ビューティフル・ドリーマー”か“攻殻”を見てもらって、アニメやSFから離れたところからの感想を聞いてみたいと思います。

*1:劇場公開1995年。

*2:義体がトラックにはねられる前のシークエンスとか。

*3:テレビの30分アニメのテンポに慣れすぎているな、とは思うんですが。

*4:当時の印象は、「それなりに面白い。しかし士郎正宗ってのは引き算の苦手な漫画家だな。」

*5:ということは士郎正宗のマンガも「何も残らないマンガ」ではなかったということか

*6:スパイク・シュピーゲル、“カウボーイビバップ”。