ライトノベルは恐ろしい

Angel Heart Club(7/19付)経由で
小説とオタク文化とライトノベルの位置関係 - WINDBIRD
という記事を目にした。
その中にこのような一文があった。

ハルヒを読むくらいなら夏目漱石を読め」という比較が行われるジャンルなのです。

え、「ライトノベル」ってジャンルを表す言葉だったんですか?・・・それは違うんじゃないかな。


ライトノベル」ってね、得体が知れなくて恐ろしいんですよ。
これが「恋愛小説」とか「歴史小説」なら怖くない。だって中身が透けて見えているから。「恋愛小説」の棚から手にした本には必ず恋愛が描かれているし、「歴史小説」には歴史上の事件や社会体制を枠組みにした物語がかかれているはず。
でも「ライトノベル」だとそうは行かない。そもそも「ライト」ってなんだ?軽い小説?右傾化してる小説?そこに何が書かれているかが全く透けてこない。
これは恐ろしい状態ですよ。自分が手にとった本が聖書なのか地雷なのか予想できないんだから。
というわけで、ライトノベルをジャンルとするには無理があると主張させていただく。強いて言うなら「若年層向けカテゴリー」、こんな感じかな。


そこでこちらの記事です。
Welcome to S.O.A!-ライトノベルに入門書はいらない? 
入門書が要るか要らないか、というのは的外れです。
ミステリーやSFが引き合いにだされているけど、「入門書」とされた作品も入門書として書かれたわけじゃない。結果的に読みやすいテキストだったり、大量の前提知識を要求しなくても理解できる設定だったりするだけのこと。
ミステリーもSFも確立されてからずいぶんとなるジャンルです。その歴史の中で淘汰を生き抜いた作品が「古典」となり、集団知によるフィルタリングによってガイドラインが作られてきたのです。
しかしライトノベルにはまだそれだけの歴史が無い。そのうち入門書も古典も浮かび上がってくるでしょうが、今はまだそんな段階じゃない。あるいは短すぎる消費サイクルもあって、淘汰を生き抜くこと自体が無いのかもしれませんね。
リンク先の記事では

作品が体系化(類型化じゃなくて)されていないラノベには入門書的なものはいらないんじゃないのか?

とあるけれど、既に入門書的な作品が存在していると思います。必ずね。


今回リンクした二つの記事には、普段ライトノベルを読まない層がライトノベルに手を伸ばそうとする時に「ライトノベル」が読みたいからそうするわけではないというアイデアがすっぽり抜けているんじゃないでしょうか。いや、id:akisue2氏は

入門書はいらないが、初心者が何を読むのかの指針としてガイドブックはあったほうがいい

と書かれているから、必ずしもそうじゃないのかもしれませんが。
誰しも本を手に取ろうとするときは、何らかの期待がある場合が殆どです。しかし多岐にわたる傾向の作品群が積まれているライトノベルの書棚は、その期待に応えてくれそうな書物を探すのには不向き過ぎです。
そしてあまりにも内に向かって閉じているように見えるライトノベルは、もっともっと風通しと見通しをよくしてくれないと、初心者や部外者は怖くて近づけませんよ。まるで魔窟か何かのようなんだから。


と、ここまで書いたけど、よしりんさん(@Angel Heart Club)の「ライトノベルソムリエ」の一言には勝てないのであった。