ライトノベルについて、もう少し

拙文にトラックバックを返してもらえたので、ここははてならしく(?)もう少しお付き合いして頂こうと思う。


なるほど、ライトノベルに入門書はいらない?で使われた「入門書」とは斯様な意味でしたか。それならば確かに僕の誤解でありましょう。その指摘は素直に受け入れたいと思います。ただ、

「初心者にオススメな小説」ではなく、「(より専門的なジャンル小説を理解するために)初心者が読まなくてはならない小説」

は、入門書ではなく古典と呼ぶ方が適切ではないかと思います。


さて、上の誤解が解けたとしても、まだ僕とid:akisue2氏の間には齟齬がある気がします。
それは、ライトノベルを文芸上のジャンルとして捉えているかどうかという点です。これは拙文[雑文]ライトノベルは恐ろしいの前半部分において述べたことでもありますが、「ライトノベル」をジャンルとすることには、些かならぬ抵抗があります。
ライトノベル」と称される作品群が雑多なテーマからなることには同意してもらえるでしょう。僕の目からすると、「ライトノベル」とは様々なジャンルの若年層向きカテゴリーの集合体であり、それ自体がジャンルを形成しているとは思えません。「ジャンル」という用語は、横方向だけでなく縦の厚みがあってはじめて使われるべきではないでしょうか。
僕は「ライトノベル」とは、単に小説のカテゴリーというよりむしろ表現形式を指す言葉なのではないかとさえ思っています。横に並べると、「SF」「ミステリー」「恋愛」「ライトノベル」・・・ではなくて、「小説」「短歌」「戯曲」「ライトノベル」・・・。だから“ライトノベルプロパー©id:akisue2氏”たちをさほど奇異には感じません。彼らはこういう形式が好きなんだ、そう思うだけです。


さて、id:akisue2氏が書いた

では、「ライトノベル」プロパーは、「ライトノベル」の面白さを初心者に十分に説いているのか? 特定のライトノベルの面白さではなく、ジャンルとしての「ライトノベル」の面白さを、です。。このジャンルとしての「ライトノベル」の面白さに共感する人が増えれば、「ライトノベル」プロパーは増えると思います。

という文章には、(「ジャンル」を「形式」と置き換えれば)全く異論ありません。でもこの作業*1は困難を極めるでしょうね。
見た目は小説と変わらず、中身は学園恋愛ものだったり異世界ファンタジーだったりで一定ではない。表紙を飾るイラストも曲者です。
また、多くの本読みはお気に入りのジャンルを持ち、そこからなかなか離れようとしません。高いところにある本は背伸びをしてでも読みたがるけど、となりの本棚には手を出したがらないものです。ライトノベルの本棚には色々なジャンルの本が置かれていて、それが魅力でもあるのでしょうが、それを魅力と思わない人の方が多いでしょう。
ああ、ここでも「ライトノベル」の得体の知れなさが立ち塞がります。


ライトノベル」外部の人間からすると、「ライトノベルに入門書はいらない」ということさえ分らないんですよ、そもそもね。仮にそう言われたとしても、簡単には「はい、そうですか」とはならないでしょう。事実、僕自身がそんなフラットなわけないだろうと思っているし。
部外者が「ライトノベル」を読んで見たいと思ったなら、とりあえず古典とされる作品が知りたいでしょう。もしもid:akisue2氏が言うように「入門書」=古典が存在しないのだとしたら、ご新規さんは困惑するし、“ライトノベルプロパー”拡大員の苦悩はさらに深まりますね。まぁ、拡大員の苦悩なんてどうでもいいことですが。でも作品の蓄積と淘汰が進めば否応無しに「入門書」が生まれてくるんじゃないかと思います。その時は「ライトノベルは死んだ!」と叫ぶのもいいかもしれませんね*2

*1:もちろんライトノベルプロパーを増やすことね。単語の置き換えじゃないよ。

*2:かなりの高確率で既に叫ばれてそうだけど