並立する科学と宗教 〜交響詩篇エウレカセブン 37話 「レイズ・ユア・ハンド」〜

宗教や哲学のキーワードを鏤めたアニメはこれまでにもたくさんあるけれど、宗教家と科学者が対談してしまったアニメは初めてじゃないだろうか。少なくとも僕は初めて見た気がする。
いや、「神はいるのかいないのか」みたいなことを劇中のTV番組として背景で流れていたりはしたかもしれない。でも、役名のあるキャラクターが作品の世界観として語り合っているのは珍しい。


劇中で語られていた「科学と宗教は同じ道の両端にすぎん(byノルブ師)」というのは、おっしゃる通り。世間の人は科学者は宗教を信じていないと思っているかもしれないけれど、この世の多くの科学者も宗教を頭ごなしに否定したりはしない。
本来の宗教とは体系化された世界観のこと、つまり哲学そのものだ。思弁により真理を目指すのが哲学で、実験と実証によって真理を目指すのが科学。両者は同じところを目指す道を切り開いていこうとしている。宗教と科学は対立するものではなくて並立するものだ。


現代の生活の基盤は科学にある。日常の利便性の全てが科学に支えられていると言ってもいい。科学に比べれば、宗教が生活の役に立つと感じることはほとんど無いだろう。
長い歴史を持つ宗教は、その歴史の中で体系に洗練を加え、批判と対することで強さを身につけてきた。宗教が歩んできた歴史に比べれば、科学の歴史は実に短い。
これらのことは、どちらが優れているとか、より真理に近いとか、崇高だとかそういう話じゃない。前へ進むのに右足から踏み出すか左足から踏み出すか、ほんとはその程度のことなのかもしれない。でも、ついどちらかに傾いちゃいがちなんだよね。


今朝の「エウレカセブン」はあまり出来のよくない回だったけど、科学と宗教が良い形で並立しうることを見せたという点は評価したいと思う。ただ、その語り合う言葉がわかったようなわからないようなものになっていたのが残念だった。